2024.09.01
釣り・グレ
ポンピングするな、グレが横向く余裕ができる

「細い糸で魚を取るにはゴリ巻きするのが一番や」
〇90度の角度を保持できない
竿の角度の話を続ける。 道糸に対して竿が90度であれば、竿の弾力がフルに生かせることはみんな知っている。しかし知っている事と、実際にやれることとは違う。 みんなそうしているつもりなのだろうが、現実にはやれてない。 ここまでは前回、解説したが、それはポンピングにも表れていることを知っているだろうか。 魚を引き寄せるときはリールを巻くのではない。竿で寄せておいて、竿を倒しながらリールを巻く。これがポンピングで、魚を取り込む為の基本的なテクニックとされている。 竿を立てたまま強引にリールを巻くのは、ゴリ巻きと称し、それをやれば周囲からさげすまされる。 しかし松田はこのポンピングをも否定する。 ポンピングすれば必然的に竿は90度の角度を保持できない。リールを巻きながら竿を倒した時、どうしても90度以下になる。相当釣り込んだベテランでも、60度から40度にまで倒すこともある。 グレがその瞬間に走ったらどうなるか。竿の弾力がフルに発揮できず、糸は伸びきってしまう。 その結果、糸は切れる。 どうしてもポンピングしたいというのなら、竿を極力倒さないように、小刻みにやるべきだ。 精一杯後ろに起こし、竿を少しだけ倒す間にできるだけ速くリールを巻く。 それを何度も繰り返す。そうすれば竿を90度近い状態で保持できる。 松田のグレをかけたシーンを見てもらえばわかると思う。出来るだけ速く何度も小刻みに行っている。
〇ポンピングするから根に入る
ポンピングの欠点はもう一つある。 魚にかかるテンションが一瞬にしろ緩むから、その間に魚に主導権を握られる可能性があるのだ。 1.75号の竿に1.75号のハリスで締め上げれば、50㎝台のグレでも自由には泳げない。 松田は言う。「反対向いて一生懸命尻尾振るのが精一杯や」 その時、テンションが緩んだらどうなるか。グレは一目散に、手近の岩陰へ逃げ込むだろう。そして、根に入るか、根ズレする。 魚が好きなように走るから、根に入ったり、根ズレしたりする。それなら好きなように走らせなければいい。魚に余裕を与えなければいい。 それが松田のいう「引っ張って引っ張って巻きまくる」ことになる。 もちろん、根ズレしているのに引っ張ってはいけない。地形や足場の関係で、魚を引き寄せると必然的に根ズレする釣り場もある。 糸は強くなっている。が、ショックと根ズレにはまだ弱い。松田でも、根ズレしていると分かったら強引さは影をひそめる。途端に慎重になる。
〇シワ寄せが竿とリールに
糸を出すことはしなかったけれど、魚が引っ張った時はリールを巻かなかった。 と松田は自分でそう言う。 ポンピングはしない。糸も出さない。それでも0.8号のハリスで松田は50㎝を超すグレを取った。今でもそれは変わらない。変わらないどころか糸が強くなった分、さらに過激になっている。そのしわ寄せは、もろにタックルに及ぶ。 竿を曲げたままでリールを巻くから、まず道糸が痛む。竿もガイドを切ったり、腰を抜かせたことが数知れずある。リールは1年でギアがガタガタにすり減る。オーバーホールするためにメーカーへ送ったら、これだけ傷んでいるリールは初めて見たと言っていたそうだ。
〇道糸を直線にして高速で巻き取る
グレに余裕を与えなければ根に入らないという端的な例がある。 松田はウキが入ったら合わせもせず、竿を寝かせたままで、リールを3倍近い速さで巻いてみた。グレの頭はこちらに向いたままだから、反転する隙を与えなければ魚はこちらの思うようになる。足元まで引き寄せたところで、波に乗せてポンと抜き上げる。 同じようなシーンは四国の牟岐でも経験している。古くから開発されたこの釣り場は魚がスレてしまっているから、1号以上のハリスを使うと非常に食いが悪い。 そこで、まずグレを出来るだけ浮かせる。深いところで食わせると水圧がかかるから、ハリスに余分な負担がかかる。それを避けたのだ。 そしてやはりアタリが出た瞬間に、竿を寝かせてリールを高速回転させた。1号ハリスで難なく40~50㎝のグレが引き寄せられる。 ただし、こうやって寄せたグレは全く疲れていない。足元で緩めると途端に抵抗を始める。磯際だけに、暴れられると厄介だ。さすがに1号ハリスで抜き上げられないから、1発で掬わなければならない。
このテクニックは図のような地形での取り込みに応用できる。 岩棚の先でそれも深場で食うと、通常の取り込み方ではほとんど根ズレする。 そこで、アタリと同時に竿を倒し、高速で巻き取る。竿を立てると、この場合は弾力が邪魔になる。グレに走る余裕を与えることになるのだ。 根ズレが全く防げるわけではないから、1尾釣っただけでハリスはズタズタになる。 そのたびに交換はしなければならない。
ー松田稔のグレ釣りバイブル・釣ってなんぼや! 1997年出版より一部引用ー