2024.08.23
釣り・グレ
口太ならオセン、尾長にはキツがつきもの

「対象によって釣場が変わり、エサ盗りの種類も変わる」
〇口太釣場は浅く、尾長釣場は深い
本当にエサ盗りをかわそうと思えば、
魚種を確認して、それぞれの習性を利用しなければならない。
この、魚種の確認をするというところで、松田なりの見識がある。
つまり、尾長釣りか口太釣りかによって、エサ盗りの種類がある程度限定されるということだ。
口太釣りは概して浅く、シモリが多い。
尾長は小さいのしかいない。せいぜい35㎝まで。 そんなところはオセンが多い。
逆に言えば、オセンが多いところで尾長の40㎝クラスがバンバン釣れることは、全く無くはないが、非常に少ない。
これが尾長釣場なら、水深があって潮通しがいい。
だから、エサ盗りはキツやサンタになる。 オセンもハゲも少ない。
他に、時期による違い、その釣り場でよく使われるエサの違いによっても、エサ盗りの魚種は異なる。 アジ、サバは一年中いるわけではない。
夏の後半から初冬にかけて多い。 年回りによっても、数は全然違う。
それに比べて、オセンやハゲは一年中いる。
やはり、オキアミを撒く影響と考えられるー松田はそう言う。
赤アミを主力に撒く地域だったら、赤ジャコとかタカベがメインになる。
〇かわせんことはないがアジはめんどいぜ
前述したように、この魚は一年中いるわけではない。
だが、大量に発生すると、このアジほど面倒な魚はいない。
なにしろ、足が速い。だから、分離できない。
アジが嫌がる刺し餌を使えば話は簡単だが、撒き餌も刺し餌も同じものでないといけない松田は、そんなことなど聞く耳を持たない。
その松田が考えついたアジ対策とは、次のようなものだった。
まずアジの種類を見る。 黄色いアジはシモリについている。
回遊性ではないから、オセンと似たやり方でなんとかかわしようがある。
一方、青みの強いアジは回遊性。
松田いわく、
「こいつが多いときは釣りをやめて寝るに限る。
せっせと釣って干物にしてもエエ」
が、松田はかつて、これさえもかわしたことがある。
【アジの壁】を作って遮断したのだ。
その時撒いたオキアミは、なんと1日に6反(1反は3㎏角×16=48㎏)という。
「今はできんで。あのころはな、一生懸命勉強しよったからな。餌持っていくのが大層だとか考えてないで。なんとかクリアせんという頭だろう。銭とか、疲れるとかなんも考えとらん。グレがおるのは分かっとるから、なんとか釣ろうとしていた時代や」
48㎏×6=288㎏のオキアミを松田はひたすら撒いた。
半分、無意識で撒き餌するから、杓も小さいものを自分で作った。
釣りをする前に①②③の撒き餌を続けていると、松田の体の動きを見ただけで魚は集まるようになる。アジの壁ができてしまうと、外から入ってこれなくなる。
そこで、手前を釣るとグレの口まで刺し餌が届く。
撒き餌が途絶えると、アジはカベの内側に入ってくるから、①②③の撒き餌はひたすら続けなければならない。
だから、実際に釣りをする時間は短い。
やはり、エサ盗り対策の基本は撒き餌の集中という事になる。
アイ=アイゴ科アイゴ
愛されている地域もあるが、アンモニア臭いのと毒刺のせいで、総じて人気はない。 鈎掛かりすると強烈に抵抗するため、どんな大物が掛かったかと期待するが、やがて竿先を叩き始めてがっかりする。
〇グレが減るとアイが増える
近年、アイが異常な勢いで増えている。
本来は夏魚なのに、12~1月でも釣れたりする。
地球温暖化の影響で、冬でも水温があまり下がらなくなったためと考えられる。
ところが、この魚も、松田がグレ釣りに行く四国の磯には少ない。
かつて、異常低温の為、瀬戸内海のアイが大量に死んだからだ。
もう一つ、汚れた海には住めないという理由もある。
グレとアイはおもしろい関係にある。
食性がよく似ていて、メインは植物性だが、動物性も食べるという雑食性だ。
そのせいだろうか、共生はしない。
グレが多いところはアイが少なく、逆にアイが多い釣り場はグレが少ない。
グレの方が動きは速いから、自然界ではアイの口にあまりエサが入らないのだろう。 ところが、グレが減ると餌を食べやすくなる。すると、アイが繁殖する。
自然界では絶対的なエサの量が限られているから、両方を満たすことができない。
片方の分しか満たせられない。だから、勢力の強いほうが勝つ。
そのいい例がやはり四国の日振に見られる。
かつては、すぐ近くの由良には多かったのに、日振でアイなどを見ることは一度もなかった。 恐らく、グレがたくさんいたからだろうーーー松田はそう推測する。
ここ1、2年、イワシの数が減ってきた。
反対に、アジが増えている。
イワシもアジも同じ海中のプランクトンを食べている。
グレとアイの関係に似ているとはいえないだろうか。
ー松田稔のグレ釣りバイブル・釣ってなんぼや! 1997年出版より引用ー