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2024.08.03

釣り・ウキ

ウキは仕掛けのパイロット


Question(以下Q)「松田さん、様子はどうですか?」
会長(以下、太文字)ん?いやあかん。何ちゃおらんぞ。子魚一匹出てこんわ。 この分やと、グレの口元まで刺し餌を持っていかなならんかもしれんな。
Q「そこまで持っていけば食いますか?」
そらわからん。グレに聞いてみんことにはな。グレに声かけて聞いてみてくれるか?(笑)
Q「声をかけてみますから釣ってくれませんか?(笑)」
そら一休さんの虎問答やないか!

突然「多種流になったな」と松田さんがつぶやく。
Q「え??多種流?」
そうや。流れ方が複雑になってきとる。
Q「松田さん、流れ方が変わっているようには見えないんですがねぇ。」
見ただけではわからんやろう。表面はスイスイ同じ方向流れとるけん。そやけど底の方では磯の方へ向かう潮が流れてるんよ。
Q「どうしてわかります?」
ウキでよ。あのウキの向きを見とればわかるんや。
Q「ウキの方向?」
そうや。間違いなく磯の方へ向こうとるけん、ウキをよく見ときよ。
と、言いながら、松田さんは糸を巻き取りにかかった。
リールのハンドルをゆっくりと回転させていく。
道糸とウキの間が直線に張った。
当然、ウキは松田さんの方へ進んでくるはずだ、と私は考えていた。
ところが、予測に反してウキはやや左手へ移動しつつ磯へ近づいてくるではないか。 Q「あれ?しも手の方でウキは磯に向かっていますねぇ。」
うん。ハリスが沖から磯の方へ向こうとった証拠や。
上層と底では、完全に流れ方が違うてるんよ。
上層の流れはまっすぐ下流へ向こうてるんはわかる。
ところが、底の方の潮は今見た通りや。
あっちこっちに振られるんかして、複雑に流れるようやな。
Q「なるほどねぇ。それがウキでわかるんですか?」
そうや。わかるように設計してあるんでな。
そやから仕掛けの状態、流れの方向もウキでわかるんや。
ただ、ウキを流しとくだけでわかるもんではない。
仕掛けが斜めになるようにして、キチっと流しとかんとわからんわな。
Q「なるほど、まあ仕掛けの流し方は腕の違いということもありますから、ひとまず置いて、 ウキでわかるという点をもう少し教えてもらえませんか?ウキのどこで見分けるんですか?」
ウキの傾き角度でわかるんよ。
Q「ほう。しかし遠くへ飛ばしたら、ウキ全体は見えないのでは?」
あーそう考えるか。ウキの傾き角度を見るというても、
ウキ全体で判別するんとは違うんよ。
ウキの頭を見とけばわかるんや。
Q「えっ。ウキのトップだけで?こんなに小さいのに?」
そうや。そやからウキの頭にだけは鮮明な色を使うてるやろ?
Q「うーん。それだけでわかりますか?」
自分で作ったウキやからな。ちゃんとわかるように設計してあるんや。
ちょっと見ときいや。

と松田さんは仕掛けを流心へ振り込んだ。ウキは右から左へ流れている。

しばらくして「なじんだな。今のウキのトップはどう見える?」と松田さん。
見ると、小首をかしげたような形で向かって左肩を上げ、傾いた状態で流れている。 Q「トップの半面がよく見えますねぇ。」
これが、仕掛けは斜めに流れていることをウキが表現してる状態なんや。
もうちょっと待っときよ。

松田さんの言葉を乗せて、ウキは下流へ移動していく。
およそ竿3本分移動したときである。
ウキのトップに塗られた鮮やかなオレンジ色の面積が少なくなった。
目の錯覚かと、目を他に転じ、再度ウキへ戻してみたが同じだ。

Q「トップのオレンジが小さくなりましたねぇ。」
うん。あそこでは仕掛けが磯の方へ伸びてきたためや。
(ウキの)足の方が磯側へ向いて、 トップが沖へ振られてるんよ。
そやからや。
Q「なるほど。たかがウキ一個といえども、重要な役目を負っているんですねぇ。」 そらぁ、いろんな役を背負うてるわな。
その中でも、ウキに関して一般的に重要視されてるんは、
アタリをとることやろうな。
ほとんどのウキが、アタリをとることを第一目的にして作ってるんと違うか?
そやけどわしは違う。
Q「えっ!アタリを敏感にキャッチして表現することを主眼目にしていないんですか?」
アタリをとることは重要なことの一つや。
ただわしは、それを一番の目的にして作っとらんのよ。
Q「じゃあ、何を最重要視してるんです?」
グレに食わすことや。 アタリをとるにしても、その前に刺し餌をグレに食わさなならんのと違うか?
Q「そりゃあ当然のことですし、論法からいえばその通りですけど。」
いや。論法というけど、実際は食わさんことにはアタリはでんのや。
当然のことだ、といわれれば確かにそれには違いない。
けどもやね、その「当然のこと」を釣り人はどこまで考えてるん?
Q「グレに刺し餌を食わす、ということをですか?」
そうや。食わすことやぞ。グレが食うてくれることやない。
食わすことを考えずに、アタリのことを先に考えとっても意味がないやろう?
アタリのことを先に考えてるというのは、食わすんと違うて、
グレが食うてくれることを期待してるからと違うか。
グレ釣りというんは、食わして初めてアタリのことを考えるんが筋やと思うがなぁ。

Q「確かにその通りです。食わんのにアタリがでるはずはありませんからねぇ。 しかし、食わすというのは、釣法、換言すれば食わす腕、釣技のジャンルであって、ウキで食わす、というのではないのと違いますか?」
なるほど、そう考えるか。ちょっと禅問答みたいになるけど
「食わすのが先決なんは当然」と意識しとっても、
その「当然」にあんまり気をつこうとらんように思うな。
食わすんは釣技のジャンルで、ウキはその部門に入らん、
と考えてるんやったら、ウキにそれほど気を配る必要はない。
Q「といいますと、ウキに対する私の考え方は改めないかんわけですね?」
グレ釣りがうまくなろうと思うんやったらな。
他の人のことはわからん。
そやけど、わしは、食わすためということを重要視してウキを作ってるよ。
Q「ウキというのは、アタリをとる・仕掛けを飛ばす・仕掛けを流れに乗せて遠くまで運ぶ というのが主な役目だとばかり思っていたんですがねぇ。松田さんのウキに対する考え方は、 それと大分違うんですねぇ。 じゃあ、松田さんが考えているウキの役割とは?」
そやなぁ、いうならウキはわしの目や。
Q「松田さんの目??」
うん、それともわしの案内人かなあ。
Q「と、、言いますと???」
さっきも見とったやろう?ウキを見てるだけでハリスの方向がわかったはずや。
Q「あーそれで「目」とか「案内人」とうことになるんですね?」
いや違う。
Q「また「違う」ですか(笑)!!で、どう違うんです?」
ハリスの方向を示すだけとは違うんよ。ウキの角度が、ハリスの角度でもあるわけや。

ー松田稔のグレ・チヌ攻撃的戦術 1994年出版より引用ー

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